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2026.08.24

第23回東京国際ミュージック・マーケット(TIMM) ビジネスセミナー参加レポート

2026年6月12日、第23回東京国際ミュージック・マーケット(TIMM)のビジネスセミナーにB-sideプロジェクト リーダーの徳留愛理が登壇しました。

セミナーのテーマは「クリエイティブの現場を支えるーエンタメ業界とメンタルヘルス」。

「メンタルヘルス」という言葉を聞くと、不調になった人のためのものだと思う人は少なくないかもしれません。

しかし、TIMMで開催されたセミナー「エンタメ業界におけるメンタルヘルス」では、その前提そのものを問い直す議論が行われました。

音楽、映画、心理支援——異なる立場の登壇者たちが語ったのは、“心の健康”は創造性を支えるインフラであり、業界の未来に直結するテーマだということでした。セッションの模様をレポートします!

 

speaker:

徳留愛理 ソニー・ミュージックレーベルズSML Management 副代表 / B-sideプロジェクトリーダー

村田千恵子 ミリアゴンスタジオ プロデュース事業部 執行役員

みたらし加奈 公認心理師・臨床心理士

moderator:

竹村謙二郎 ソニー・ミュージックエンタテインメント サステナビリティグループサステナビリティ推進部

 

メンタルヘルスは個人の問題ではない

冒頭、モデレーターの竹村氏は、近年メンタルヘルスが「人的資本」や「未財務」の観点から注目されていることを紹介しました。

これまでメンタルヘルスの問題は非・財務であり、事業の財務には関係ないとされていましたが、いまでは未・財務つまり、いまはまだ財務上に表れていないが将来的には必ずインパクトが出てくる領域と捉えられています。

その流れを受けて、B-side立ち上げの背景を語ったのが徳留です。30年以上アーティストマネジメントに携わってきた経験から、アーティストとファンとの距離感がSNSによって大きく変化したことを指摘しました。

「アーティストのメンタルを支えることが、現場だけでは限界を超えていると感じる場面が何度もありました」

「B-sideは、そうした実感から生まれたプロジェクトです。カウンセリング、24時間のオンライン医療相談、ワークショップ、などを通じて、アーティストだけでなくスタッフも含めた支援を行っています。」

 

好きな仕事だからこそ止まりにくい

議論は次第に、エンタメ業界特有の働き方へと広がっていきます。

映画業界の視点から語った村田氏は、制作現場の複雑さをこう表現しました。「映像業界は、誰の才能がどう評価されるかが見えにくい世界なんです」

一つの作品に100人以上が関わることもある映像制作。責任感と情熱が強いからこそ、無理を重ねやすい構造があるといいます。

一方、徳留も音楽業界について、「エンタメの仕事は基本的には楽しくやりがいもあり、ノンストップでやってしまうこともある」と語りました。

気づかないうちに負荷が蓄積し、”ポキッと折れてしまう”ケースもある。だからこそ、周囲が意識的に休息を促すことの重要性が共有されました。

 

“歯医者に行くように”相談してほしい

ここで心理支援の立場から新たな視点を加えたのが、みたらし氏の言葉でした。

「カウンセリングは、歯医者さんで定期検診を受けるような感覚で利用してもらえたらと思っています」

不調になってからではなく、自分の状態を確認するために使う——。この“予防”の視点は、セッション全体を通じて繰り返し語られたキーワードでした。

また、カウンセラーとの相性についても、「一人目が合わなかったからといって、カウンセリングそのものを諦めないでほしい」と強調。B-sideでは、業界理解のある複数のカウンセラーとつながれる体制を整えていることも紹介されました。

 

ケアする人をケアするという視点

特に印象的だったのは、支援する側へのまなざしです。マネージャー、プロデューサー、リーダー——人を支える立場の人ほど、自分の不調を後回しにしやすい。

徳留は、B-sideが重視している考え方として、「ケアをする人をケアすることが大事」と語りました。

村田氏も、現場で相談役になる人ほど孤立しやすい現実に触れ、「支える人を支える仕組みが、結果として作品づくりや組織全体を支えることにつながる」と続けました。

 

見えている景色を、いったん疑ってみる

後半では、ジェンダーや多様性の話題にも及びました。

徳留は現場で感じる矛盾を指摘し、その伝え方について率直に語ります。

「すごく優秀な若い女性が現場でたくさん働いている一方で、上の方に女性がいない光景に慣れてしまっていますが、女性は本当に優秀なんだと言われているにも関わらず、意思決定の場になると女性は少ない。優秀と言われていた人がそこまで離脱するのは不自然。目に見える現状だけをあまり信じないようにしないと、この先なにも変わらないのでは。」

「声高に訴える感じになると逆にメッセージが薄まるので、繊細に粒立てて伝える必要がある」

また、マイノリティという立場の女性が別の場ではマジョリティとして無意識に差別をしている可能性があり、常に自分には気づいていないことがあると思うのが大事という点も語られました。

みたらし氏はインポスター症候群について、「女性や社会的マイノリティが自分自身に十分な能力や実績があるのにも関わらず、自分の成功体験が認められずに『周りを騙している』とか『過大評価されてるだけだ』と感じてしまう心理状況」と説明しました。男性にも”泣いてはいけない、男らしくいなくてはいけない”という考えが刷り込まれていて、カウンセリングの場でも感情を吐露せず実績や行動の話だけになることを、社会構造の歪みから来ていると指摘。メンタルヘルスの観点からも、自分でも気づかない”こうあるべき”を見つめ直す必要があると語りました。

 

この業界をどう変えていきたいか

業界の現状認識から始まり、構造的な課題の議論を経て、個人的な経験も織り交ぜた話にたどり着いた本セッション。最後に徳留は、B-sideの活動を通してエンタテインメント業界に起こしていきたい変化を語りました。

「我々の仕事はアーティストや クリエイターがいないと成り立たないので、健やかに仕事をしてもらう環境を作るのは、ビジネスとしてのリスクヘッジです。B-sideに関しては、ビジネスの必要経費として認めてもらえたという非常に恵まれた環境で生まれ、業界に徐々に広がりを見せています。上の世代はいろいろなハラスメントをくぐってきたサバイバーでメンタルサポートは不要と思うような強い人が多いですが、若い人はそうではないかもしれないことに思いをはせてほしいです。メンタルケアが自分ごととしてとらえられるようになるといいなと思います。」

 

エンタテインメントは、人の心を動かす仕事です。

その作品を生み出す人たちが、安心して挑戦し、休み、また創作に戻ってこられること。

今回のセッションは、そんな環境をどう実現していくのかを、業界全体に問いかける時間となりました。

 

B-sideはこれからも、”ケアすることが当たり前”の文化を広げ、エンタテインメント業界で働く一人ひとりを支える取り組みを続けていきます。

 

 

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